ねこのフォーラム飼い主の部屋
ねこのフォーラム ねこのフォーラムOWNER'S ROOM AIM署名
CULTURE / 文学

文学のなかの猫

猫はいつから日本文学に登場したのか。平安貴族の愛玩動物から、近代作家の伴侶、そして主人公にまで。日本人と猫の関係を、文学という記録の側から辿ります。

1. 平安期 ── 源氏物語の唐猫

日本文学に登場する最古級の飼い猫の記述は、紫式部『源氏物語』第34帖「若菜上」。光源氏の正妻・女三宮が飼っていた「唐猫(からねこ)」が綱を引いて御簾を巻き上げ、柏木が女三宮の姿を垣間見るという、物語の重要な転換点に猫が登場します。

平安期の貴族にとって猫は中国渡来の希少な愛玩動物であり、清少納言『枕草子』にも猫が「上にさぶらう御猫」として位階を持つ描写があります。

2. 近代 ── 夏目漱石『吾輩は猫である』

明治38年(1905年)、雑誌『ホトトギス』に連載開始。名もなき猫の視点から、明治知識人の世相を風刺した日本近代文学の里程標。

引用
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。」 ── 夏目漱石『吾輩は猫である』冒頭

漱石自身が縁あって飼い始めた野良猫が下敷きとなっており、漱石邸の「猫の墓」は現在も新宿区早稲田の漱石公園に残されています。

3. 谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』

昭和11年(1936年)。三角関係の中心に置かれるのは、雌猫リリー。谷崎自身が大の愛猫家で、戦時中の疎開先にまで猫を連れ歩いた逸話が残っています。

4. 内田百閒『ノラや』

昭和32年(1957年)、愛猫ノラを失った悲嘆を綴った随筆連作。「猫を失う」という題材で、文学が成立しうることを証明した古典的作品。

5. 現代 ── 村上春樹、有吉佐和子、有川浩

出典

  1. 紫式部『源氏物語』第34帖「若菜上」(11世紀初頭)
  2. 夏目漱石『吾輩は猫である』『ホトトギス』連載、1905-1906年
  3. 谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』改造社、1937年
  4. 内田百閒『ノラや』中央公論社、1957年
  5. 新宿区「漱石公園 猫の墓」現地解説(2026年4月閲覧)