国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)創設メンバーであり、ロンドン大学王立獣医大学(RVC)教授のDr. Jonathan Elliott。猫CKD研究を30年以上牽引してきた研究者の視点を、書面取材を想定した形式でお届けします。
本稿は実際のインタビュー記録ではありません。Dr. Elliott本人の公表論文・講演内容に基づき、書面取材を想定して編集部が再構成した架空のインタビュー形式です。第3回ねこのフォーラム(2026年6-7月計画中)でのご登壇に向けた予告編としてお読みください。
──Dr. Elliott、まず先生のキャリアの出発点を教えてください。
私はロンドン大学王立獣医大学(RVC)で薬理学を学びました。1990年代初頭、英国の動物病院では、高齢猫の体重減少や多飲多尿が「歳のせい」と片づけられがちでした。しかし血液検査をしてみると、明らかにクレアチニンが上昇している。「これは病気だ、しかも体系的に研究されていない」と気づいたのが始まりです。
──IRIS設立の動機は何だったのでしょうか。
1990年代後半、米国・欧州・日本で出版される論文を読み比べると、「ステージ」「重症度」「治療開始の閾値」がバラバラでした。これでは知見が積み上がらない。1998年、欧米の腎臓を専門とする獣医師が集まり、世界共通の分類を作ろうと合意したのがIRISです。最初は犬から始め、猫に広げました。ガイドラインは絶対的な真理ではなく、改訂され続ける生きた指針です。
──現時点で最もホットなテーマは何ですか。
三つあります。一つはバイオマーカー──SDMA、FGF23、シスタチンBなど、より早期にCKDを捉える指標の検証。二つ目はリン代謝の理解で、FGF23-クロト軸の解明が進めば、新しい治療標的が見えてきます。三つ目は腎線維化を止める治療です。私たちの最近の研究では、ある種の老化細胞(セネッセント細胞)が腎臓の進行性線維化に関与していることが示されており、ここに介入できれば進行を遅らせられる可能性があります。
──宮﨑徹博士のAIM研究についてはいかがですか。
非常に興味深い研究です。猫のAIMが構造的に機能していないという発見は、なぜ猫が他の動物より圧倒的にCKDを発症しやすいのかという長年の疑問に、初めて生物学的な答えを与えました。組換えAIMの治験が進み、もし臨床で進行抑制が確認されれば、これは獣医学全体にとって画期的な出来事になるでしょう。私たちIRISも、AIM治療下のステージング基準の見直しを議論する必要が出てくるかもしれません。
──第3回ねこのフォーラムでお話しいただく内容を教えてください。
日本の飼い主の皆さんに、IRIS分類の最新動向、SDMA・FGF23の活かし方、そして「治療目標を立て直す時代」が来ていることをお伝えしたいと思います。望月学教授(東京大学)とのディスカッションも楽しみにしています。詳細は2026年春に公開予定です。
本記事は研究動向の紹介です。愛猫の治療方針については、必ずかかりつけの動物病院でご相談ください。