「最近、水をよく飲むようになった」──飼い主が最も早く気づくCKDのサインのひとつが、多飲多尿(PU/PD)です。健康な猫の飲水量、PU/PDが起こるメカニズム、そしてCKD以外に考えるべき鑑別疾患を整理します。
健康な成猫の1日あたりの飲水量はおおよそ体重1kgあたり40〜60mL。尿量は体重1kgあたり20〜30mL程度です。フード形態による差が大きく、ドライフード中心の猫はウェット中心より多く飲み、ウェット中心の猫は飲水器からの摂取が少なく見えることもあります。 飲水量・尿量がいずれも体重1kgあたり50mL/日を恒常的に超える状態が、医学的な多飲多尿(PU/PD)の目安とされます。
腎臓は尿を濃縮する装置です。健康な腎臓は、ヘンレ係蹄と集合管で水を再吸収し、濃い尿(高比重)を作ります。CKDでは、ネフロン(腎臓の機能単位)が失われ、残されたネフロンが代償的に過剰に働きます。その結果、尿の濃縮力が落ち、薄い尿が大量に排出されるようになります。 水分が出ていく分、猫は脱水を防ぐために多く飲むようになる──これが多飲多尿のメカニズムです。「飲むから出る」ではなく、「出るから飲まざるを得ない」と理解すると、飲水を制限してはいけない理由が見えてきます。
多飲多尿はCKDだけで起こるわけではありません。シニア猫では特に、以下の疾患が併発・鑑別対象になります。
| 糖尿病 | 血糖値・尿糖の上昇。肥満猫に多い |
|---|---|
| 甲状腺機能亢進症 | 10歳以上に多発。体重減少を伴うことが多い |
| 子宮蓄膿症 | 未避妊メスで急性発症 |
| 肝疾患 | 胆道系の異常で多飲を呈する |
| 副腎皮質機能亢進症 | 猫では稀だが鑑別に挙がる |
| 薬剤性 | ステロイド・利尿薬など |
そのため、多飲多尿が見られた場合は腎臓だけでなく、血糖・甲状腺ホルモン・腹部画像など総合的な検査が推奨されます。
飲水量は計量カップで給水し、夜に残量を引くのが最も簡単です。複数頭飼育で個体識別が難しい場合は、給水器を分け、就寝前後に測ります。 尿量は、システムトイレや吸水量が計算できる猫砂を使えば、1週間の総量から1日平均が出せます。記録は獣医師にスマートフォン写真で見せると、診察効率が上がります。
多飲多尿は複数の疾患のサインです。継続的な変化を感じたら、必ずかかりつけの動物病院でご相談ください。